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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
幾つかの積石と窓を隔てて、たしか、この館のどこかに瀑布が落ちているのだ。それが、目前の犯行に、直接関係があるかどうかはともかくとして、あるいは、ファウスト博士特有の装飾癖が壮観嗜みであるにもせよ、とうていそのような荒唐無稽な事実が、現実に混同していようとは信じられぬのである。ああ、その瀑布の轟き――華美な邪魁な夢は、まさにいかなる理法をもってしても律し得ようのない、変畸狂態のきわみではないか。しかし法水は、その狂わしい感覚を振りきって叫んだ――「開閉器を、灯を!」
すると、その声に初めて我に返ったかのごとく、聴衆はドッと一度に入口へ殺到した。その流れを、暗黒と同時に扉を固めた熊城が制止したので、しばらくその雑沓混乱のために、開閉器の点火が不可能にされてしまった。あらかじめ観客の注意を散在せしめないために、階下の一帯を消燈しておいたので、廊下の壁燈が仄のりと一つ点いているだけ、広間も周囲の室も真暗である。その喧囂たるどよめきの中で、法水は、暗中の彩塵を追いながら黙考に沈みはじめた。そこへ、検事が歩み寄って来て、クリヴォフ夫人が背後から心臓を刺し貫かれ、すでに絶命しているという旨を告げた。