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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

とそれから法水は、彼が演出しようとする心理劇が、いかに素晴らしいかを知らせるのだった。「そこで、僕がデシル法を譬喩にした本当の意味を云うと、それが、旗太郎と提琴との関係にあったのだよ。君は気がつかなかったかね。あの男は左利にもかかわらず、現在弓を右に、提琴を左に持っていたじゃないか。つまり、それがデシル法の、左から右へ――の本体なんだよ。しかし支倉君、まさかにその恒数が、偶然の事故じゃあるまいね」

その時、クリヴォフ夫人の屍体が運び出され、それと入れ代って、一人の私服が入って来た。勿論全館にわたる捜査が終ったのであったが、そのもたらせられた報告には、思わず驚きの眼をるものがあった。と云うのは、殯室の鍵は勿論のことで、それにあろうことかレヴェズの姿が、曲目の第一を終って休憩に入ると、同時に消えてしまったというのだった。なおそれに伴って、ちょうど惨事が発生した時刻には、真斎は病臥中、鎮子は図書室の中で、著作の稿を続けていたということも判った。しかし、それを聴くと、法水の顔にはただならぬ暗影が漂いはじめた。彼はもはや凝然としていられなくなったように、焦かしげな足取りで室内を歩きはじめたが、突然立ち止って、数秒間突っ立ったままで考えはじめた。