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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
そうすると、翌朝になって算哲が金庫を開き、家族を列席させた面前で、その印像を取られた方の一枚を焼き捨ててから、さらに残りの一枚を、再び金庫に蔵めるまでの間に、何人か、全文を映し取った乾板を、取り出した者がなけりゃならん訳だろう。実に、そのわずかな間隙が、ファウスト博士に、悪魔との契約を結ばせたのだった。それを、直観と予兆とだけで判断しても、当然焼き捨てられた一葉が、僕の夢想している屍様図の半葉に当るのだし、またそれが坐標となって、あの幻想的な空間に、怖ろしい渦が捲き起されたのだったよ」
「なるほど、その乾板は無量の神秘だろう。しかし、当然結論は、その席上から誰が先に出たか――という事になるがね」と云ったが、熊城は両手をダラリと下げて、濃い失望の色を泛べた。「無論今となっては、その記憶も恐らくさだかではあるまい。では、あの創紋と乾板との関係は?」
「それが、ロージャー・ベーコン(一二一四――一二九二、英蘭土の僧。魔法錬金士の名が高いけれども、元来非凡な科学者で、火薬その他をすでに十三世紀において発明したと伝えられる)の故智さ」と法水は静かに云った。「ところで、アヴリノの『聖僧奇跡集』