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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
「すると、十時半に僕の訊問が終ったのだから、それから鑑識課員が掌紋を採りに行ったと云う――現在一時までの間だな、そうそう法水君、これが易介を模本にしたというそうだが」と、扉の脇にある二人像を指差して、「この事は、僕には既から判っていたのだよ。あの侏儒の傴僂が、この事件でどういう役を勤めていたか――だ。だが、なんという莫迦な奴だろう。彼奴は、自分の見世物的な特徴に気がつかないのだ」
法水はその間、軽蔑したように相手を見ていたが、
「そうなるかねえ」と一言反対の見解を仄めかしただけで、像の方に歩いて行った。そして、立法者の跏像と背中を合わせている傴僂の前に立つと、
「オヤオヤ、この傴僂は療っているんだぜ。不思議な暗合じゃないか。扉の浮彫では耶蘇に治療をうけているのが、内部に入ると、すっかり全快している。そしてあの男は、もうたぶん唖にちがいないのだ」と最後の一言をきわめて強い語気で云ったが、にわかに悪寒を覚えたような顔付になって、物腰に神経的なものが現われてきた。
しかし、その像には依然として変りはなく、扁平な大きな頭を持った傴僂が、細く下った眼尻に狡そうな笑を湛えているにすぎなかった。