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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
鎮子の姿が扉の向うに消えてしまうと、論争一過後の室は、ちょうど放電後の、真空といった空虚な感じで、再び黴臭い沈黙が漂いはじめ、樹林で啼く鴉の声や、氷柱が落ちる微かな音までも、聴き取れるほどの静けさだった。やがて、検事は頸の根を叩きながら、
「久我鎮子は実象のみを追い、君は抽象の世界に溺れている。だがしかしだ。前者は自然の理法を否定せんとし、後者はそれを法則的に、経験科学の範疇で律しようとしている――。法水君、この結論には、いったいどういう論法が必要なんだね。僕は鬼神学だろうと思うんだが……」
「ところが支倉君、それが僕の夢想の華さ――あの黙示図に続いていて、未だ誰一人として見たことのない半葉がある――それなんだよ」と夢見るような言葉を、法水はほとんど無感動のうちに云った。「その内容が恐らく算哲の焚書を始めとして、この事件のあらゆる疑問に通じているだろうと思うのだ」
「なに、易介が見たという人影にもか」検事は驚いて叫んだ。
と熊城も真剣に頷いて、「ウン、あの女はけっして、嘘は吐かんよ。ただし問題は、その真相をどの程度の真実で、易介が伝えたかにあるんだ。