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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Read 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,120 characters · 516 screens
米友の梯子乗りの芸当は、大道芸としては珍らしいものであります。通りかかるものは立ちどまり、立ちどまったものは引きつけられて、そのあたりは人の山を築きました。この後、彼がどういう芸当をするかを固唾を呑んでながめていた時分に、群集の一角がどよめいて、
「お通りだ、お通りだ」
東橋の方から一隊の大名の行列が、こっちへ向いてやって来るのであります。
「それ、お通りだ、お通りだ」
と言って、早く気のついたものはどよめきましたけれども、前の方に、米友の梯子芸に見惚れていた者は気がつきませんでした。
通りかかったのは、大名のうちでも大きな大名の行列らしくあります。お供揃いはおよそ三百人もあると見受けられます。御駕籠脇は黒蝋の大小さした揃いの侍が高端折に福草履と、九尺おきに提げたお小人の箱提灯が両側五六十、鬼灯を棒へさしたように、一寸一分の上り下りもなく、粛々として練って来ました。
この大名行列のためにあわてて道をよけた人は、遠くの方からいろいろと噂をはじめる。
「御定紋は、たしかに抱茗荷のようでございましたね、抱茗荷ならば鍋島様でございます、佐賀の鍋島様、三十五万七千石の鍋島様のお通りだ」