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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Read いやな感じ (いやなかんじ) by 高見 順 (たかみじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 292,113 characters · 587 screens
これが俺の眼に映じた現実である。日本が近代的な工業国になったということが、俺の眼に与えた現実的な姿は、これだった。
原っぱに棟割り長屋が建った。建ったと思うと、どこからともなく、住み手が集まってきた。それは工場の職工たちである。山の手というイメージからおよそかけ離れた職工の住宅街ができた。
四の橋と三の橋の間の古川橋にできた、そうした住宅街の、棟割り長屋のひとつに、職工時代の砂馬は若い職工たちと一緒に住んでいた。もっとも俺が砂馬に会ったときは、すでに職工をやめて、画家みたいに髪をながくのばして、若いくせにまるで牢名主みたいに長屋で、にらみをきかせていた。こわがられていたと言うほうが正確かもしれぬ。
初めて砂馬に会ったのは、俺が中学五年生のときだった。このときから、俺の運命は狂い出したのだ。すでに大杉栄などの本を読んで、社会主義かぶれのした少年だったとは言え、砂馬に会わなかったら、俺にも別の人生があったはずだ。
どじょう屋の土間を通って、俺たちは座敷にあがった。俺は靴をぬいで、砂馬は草履をぬいで――その日の砂馬は和服だった。デパートにリャクに行った帰りだという砂馬は、まるで右翼みたいに、アオチ(羽織)をはおってマハカ(袴)をつけていた。