Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Read いやな感じ (いやなかんじ) by 高見 順 (たかみじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 292,113 characters · 587 screens
その四 枝豆くさい指
見事に命中したらしく、ぎゃっというすごい叫びとともに、犬の奴は地上からぴょんと飛びあがった。と思うと、ばたりと地面に落ちて、横に倒れたまま、四つの足で土を掻いた。
「ざまあ見ろ」
何がざまあ見ろだか分らないが、俺はすっくと立って、犬の傍に行った。蹴ろうとすると、犬が頭をもたげて、ガブリと俺の足に噛みつこうとした。
「なにを……」
歯をむいた口のなかに俺は弾丸を打ちこんだ。
ヒクヒクと身体を痙攣させて、哀れな犬は(俺はその犬を哀れと見たわけではない。逆に俺は猛烈な憎しみを感じていた)半開きの口から血へどを吐いた。
ピストルの音に、たちまち人がこっちに駈けて来るのが見える。
「あばよ」
と言って俺はその場を退散した。一目散にずらかった。
――尾垣大将を暗殺するかわりに俺は、のら犬を殺していたのである。
その四 枝豆くさい指
波子から小料理屋の住み込みの女中になったと知らせてきた手紙を、俺は本郷の下宿で受け取った。
ピストルを北槻中尉に返して、俺は古巣の下宿に戻ったのである。俺の留守中、憲兵に張りこまれ、家探しまでされた下宿屋のおやじは、これをしおに俺を追い出したかったのだろうが、朝鮮に発つとき俺は、朝鮮行きを秘匿するためにも、俺のいない間に無断で部屋を始末したりしたら承知しねえぞとおどしつけておいた。