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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Read 三国志(五) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 325,249 characters · 653 screens
孔明は、外にいて、大江の水で顔を洗っていた――やあ、お早ようと、晴々いいながら近づき、楊柳の下の一石に腰かけて、
「きのうは、ひどい目にあいましたよ。粛兄としたことが、どうもお人が悪い」
と、平常の容子よりも、しごくのどかな顔つきに見える。
魯粛も、強いて明るく、
「なぜですか。それがしが人が悪いとは」
「でも、大兄は、孔明があれほど固くお口止めしたのに、すぐありのまま、周都督へ私の意中をみなしゃべってしまったでしょう。ゆえに私は、周都督から油断のならぬ男と睨まれ、三日のうちに十万の矢をつくるべし――と難題を命じられてしまいました。もしできなかったら、軍法に照らされ、必ず斬罪に処せられましょう。何とかよい思案を授けて、私を助けてください」
「これは迷惑な仰せを承るもの。都督が初め十日以内にといわれたのを、先生自ら三日のうちにして見せんと、好んで禍いを求められたのではありませんか。今さら、それがしにも、どうすることもできはしませぬ」
「いや、都督へ向って、約を解いて欲しいなどと、取りなしをおねがいする次第ではない。ご辺の支配下にある士卒五、六百人ばかりと、船二十余艘とを、しばらく孔明のためにお貸しねがいたいのだが」