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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Read 三国志(五) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 325,249 characters · 653 screens
「あとで話す」
「まさか孔明を殺しにやったのではありますまいね。この大戦機を前にして」
「…………」
周瑜は答えもなく、口をつぐんだ。その面を魯粛は「度し難き大将」と蔑むように睨みつけていた。その爛たる白眼にも刻々と生暖かい風はつよく吹きつのってくる。
陸路、水路、ふた手に分れて南屏山へ迫った五百の討手のうち、丁奉の兵三百が、真っ先に山へ登って行った。
七星壇を仰ぐと、祭具、旗など捧げたものは、方位の位置に、木像の如く立ちならんでいたが、孔明のすがたはない。
「孔明はいずこにありや」と、丁奉は高声にたずねた。
ひとりが答えた。
「油幕のうちにお休み中です」と、いう。
ところへ、徐盛の船手勢も来て、ともに油幕を払ってみたが、
「――おらんぞ」
「はてな?」
雲をつかむように、捜しまわった。
不意に討手の一人が、
「逃げたのだ!」と、絶叫した。
徐盛は足ずりして、
「しまった。まだ、よも遠くへは落ちのびまい。者ども、追いついて、孔明の首をぶち落とせ」
と、喚いた。
丁奉も、おくれじと、鞭打って馬を早めた。麓まで来て、一水の岸辺にかかると、ひとりの男に会った。かくかくの者は通らなかったかと質すと、男のいうには、