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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Read 三国志(五) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 325,249 characters · 653 screens
周泰は云った。
「もう大丈夫。安心しろ。周都督がご自身で救いに来られた。そして作戦はこう……」
と、一切をしめし合い、ここに完全な聯絡をとった。
きのう、おかしな男が、ただ一騎、城中へ入ったというし、それから俄然城兵の士気があがっているのを眺めて、寄手の曹洪、曹純は、
「これはいかん」と、顔見あわせた。
「周瑜の援軍が近づいた証拠だ。ぐずぐずしておれば挟撃を喰う。どうしよう?」
「どうしようといっても急には城も陥ちまい。甘寧をわざと城へ誘いこんで袋叩きにするという策は、名案に似て、実は下の下策だったな、こうなってみると」
「今さらそんな繰言をいってみても仕方はない。南郡へも使いが出してあるから、兄の曹仁から加勢に来るのを待つとするか」
「ともかくも一両日、頑張ってみよう」
何ぞ無策なると心ある者なら歯がゆく思ったにちがいない。すぐ次の日にはもう周瑜の大軍がここへ殺到した。曹洪、曹純、牛金などあわてふためいて戦ったものの、もとより敵ではなかった。陣を崩してたちまち敗走の醜態を見せてしまう。
のみならず、周瑜の急追をよけて、山越えに出たはいいが、途中のけわしい細道までかかると、道に積んである柴や薪に足をとられ、馬から谷へ落ちる者や、自ら馬をすてて逃げ出すところを討たれるやらで、さんざんな態になってしまった。