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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
「話が途中だ、あとを聞かなくってもいいのか」
「うかがいますとも」菊弥が気のない調子で熱心そうに云った、「そういう話を途中でやめるなんて罪よ、ねえ」
「そうですとも、ぜひうかがいたいわ」と吉奴が云った。
松次が三味線を置き、おまさと米八が戻って来、そこへ女中が酒と肴を持って来た。
清一は飲みながら話し続けた。聞いている六人は明らかに興ざめたようすで、酌をしたり肴を取り分けたりする手つきも、うわのそらのようにみえた。清一はいまの騒ぎでしらけた気分を、自分からほぐすつもりで話を続けたのであるが、「小若は死ぬだろう」という叫びも、彼にはそれほど気にならなかったものか、まもなくすっかり調子づいて、その話しぶりもますます熱を帯びるばかりだった。
「その娘はお倫といって、年は十七か八だろう」と彼は上唇を舐めた、「いかにも箱入り娘らしくて、縹緻もいいが、躯つきや身ごなし、ものの云いようにこぼれるような、色気と、おっとりと匂うような品があった」
清一は浅草瓦町の横町に自分の家を持ち、ばあやと二人でくらしていた。
道楽が過ぎて七年まえに勘当され、香屋へは出入りも止められていたが、母親から呉れる毎月の生活費は余るくらいあった。