Japanese reading practice

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens

Aozora Bunko

そう思って八丁堀へ帰ると、米沢作馬という同心が待ちかねていて、「また椿の花片です」と云った。千之助は口をあいた。

「殺しか」

「男が殺されて」と米沢が云った、「その枕許に赤い椿の花片が一枚」

「やっぱり、そうか」

「兇器は例の釵で心臓を一と突きだそうです」

「誰かいったか」と千之助はせきこんで訊いた、「場所はどこだ」

「場所は芝の露月町、大和屋という宿屋の二階だそうです」と米沢が答えた、「まだ、どなたもいってはいません、現場に手を付けないように、井田が見張りに当っています、青木さんのお帰りを待っていたんです」

「すぐゆこう、支度をしてくれ」

あの道楽息子め、と千之助は思った。

――きさま自分で招いたことだぞ。あのとき「許婚のような者だ」とか、「私が世話をしている」などと云った。こっちの話をよく聞いて、相手の素姓に疑いをもつだけ頭がはたらいたら、こんなことにはならなかったのだ。

――よっぽど惚れこんでいたんだな。

いい年をしてばかなやつだ。

彼は一人だけ先に、駕籠をとばせながらそう思った。三十四、五にもなり、道楽も相当して来たらしいのに、ばかなやつだと思い、同時に、彼を救えなかった自分の無能をも嘲笑した。