Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
そしていま、娘と同い年の少年と酒に酔ってふざけている。堪忍できないわ、あたし云ってやる、あの男が寝たら思う存分に云ってやるわ、聞いていてちょうだいね、お父つぁん、とおしのは心の中で云った。
奥の六帖から、口三味線と唄う声が聞えて来た。おしのがいないことなどは気にかかりもしないのだろう、唄の合間にはおそのの笑い声や、わざとらしい悲鳴が聞え、組打ちでもするような物音さえした。
「ああ、死んでしまいたい」おしのは両手で耳を塞いだ、「どうしてあたしを残して死んだの、お父つぁん、こんな恥ずかしいおもいをするくらいなら、いっそ死んでしまうほうがましだわ」
でも死ぬのならあたし一人じゃあない、おっ母さんもいっしょに伴れていってやる。あの世にいるお父つぁんのところへ伴れていって、あやまらせてやる、とおしのは思った。
「そうよ」とおしのは眼をあげた、「本当にそうしてやりたいわ、あたしが男なら、――男でなくってもあたしに勇気があったらそうしてやるわ、おっ母さんていう人は、生きていればいるだけ恥を重ねるばかりだもの、できたらそうするほうがいいと思うわ」
どのくらい時が経ったであろうか、ふと気がつくと、うしろの襖が静かにあいて、誰かがそっと近よって来た。