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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

Read 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,120 characters · 516 screens

Aozora Bunko

こんなわけで、座席の入れ替えが無事に済みました。お角はこの船の中で、神様から二番目の人にされてしまいました。

まもなくお角は、その隣席にいる例の深川の炭問屋の主人と好い話敵になりました。

「どちらへいらっしゃいますね」

炭問屋の主人がまずこう言って尋ねると、お角がそれに答えて、

「はい、木更津から那古の観音様へ参詣を致し、ことによったら館山まで参ろうと思うんでございます」

「ごゆさんでございますかね」

「そういうわけでもございません、少しばかり尋ねたい人がありまして」

「ははあ、なるほど」

炭問屋の主人は腮を撫でて、ははあなるほどと言いましたけれども、それは別に見当をつけて言ったわけではありません。本来この女が今時分、房州あたりまでゆさんに出かけるはずの女子でもないし、また、そちらの方に尋ねる人があってという言い分も、なんだかお座なりのように聞えます。と言って、今日はいつぞや甲州まで、がんりきの百を追いかけて行ったような血眼でもなく、お供をつれておちつき払って構えているのは、何か相当のあたりがなければならないはずです。すでに相当のあたりがあって出かける以上は、転んでも只は起きない女だから、何か一やま当てて来るつもりなのでしょう。