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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Read 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,120 characters · 516 screens
ません。
吉原廓の内外の弥次馬という弥次馬は、数を尽して集まってしまったから、後れ走せになった三人は、どうしてもその人垣を破ることができません。
「困ったな」
「もしや宇津木の身から起った変事ではないか」
「どうともわからん、ともかく、この人混みを押破ってみよう」
浪士は人垣を、無理に破って闖入しようとする時に、
「ワアッ――」
と崩れかかる群集。その勢いは大波を返すようだから、進もうとしてかえって押し返されるほかはないのであります。
「困った、なんとかして近づいて、様子を見たいものだ」
「よい工夫はないかな」
二人の浪士は、事を好んでこの騒動を見たいのみでなく、騒動の中に何か自分に利害関係のある人がいて、その身の上が心配でたまらないらしくあります。
この時に宇治山田の米友は、路次の軒の下へ蹲って、梯子を組立ててしまいました。
いつのまにか組立てた梯子を、軒へ立てかけた米友は、
「お武家さん、ひとつこの屋根へ登って、見物しようじゃねえか」
「こりゃ梯子、時に取っての見付物だ」
この場合において恰好な見付物であり、機敏な思いつきでもあると感心し、二人の浪士はお辞儀なしに、梯子を登り出し、垂木のあたりへ手をかけて、上手に屋根の上へはね上りました。