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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
と声を掛けても、水晶掘りに夢中になっていると見えて音沙汰もない。十分も追い廻している中に、小石を拾って投げたのが中って、とうとう飛び立って二十間許離れた岩の蔭へ下りた。其時俄に四方から霧が捲いて来たので、残念ながらとり逃がして了った。後に野鳥の会の座談会でこのことを話したら、清棲伯は少し色の濃い夏羽の雷鳥であったろうと判ぜられた。しかし私の心の隅にはまだ疑の雲が少し残っている。
霧は濃くなる一方である。好い泊り場所を探しあてる望も絶えたので、尾根の窪みの稍や平らな所へ天幕を張ることにした。以前南日君の一行が泊った場所も此処だそうだ、最高点と其南の峰との間に在るカールに面している。
今夜は雪を溶して炊いたまずい飯で我慢した。夜に入ると次第に風が吹き募って、天幕の柱が折れそうになるので、交る交る起きて之を支えていた。明方雨が降り出したが大降りにならなかったのは仕合せであった。
八月三日。天気がよければ槍ヶ岳迄縦走して、上河内に下る予定であったが、心配した雨は歇み風も亦少し凪ぎたとはいえ、一週間以上も続いた好天気が崩れかけて来たのであるから、いつ又降り出すかも知れない、それで高瀬谷に下る方が安全ということにきまった。