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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
そこは、宗像博士の依頼者接見室で、三方の壁の書棚には博士の博識を物語るかの如く、内外の書籍がギッシリと詰まっている。室の中央には畳一畳敷程の大きな彫刻つきのデスクが置かれ、それを囲んで、やはり古風な彫刻のある肘掛椅子や長椅子が並んでいる。
「先生、先生はどこです。アア、苦しい。早く、先生……」
若い男は床の上に倒れたまま、喘ぎ喘ぎ、精一杯の声をふり絞って叫んだ。
すると、唯ならぬ物音と叫び声に驚いたのであろう、隣の実験室へ通じるドアが開いて、一人の男が顔を出した。これも三十歳程に見える若い事務員風の洋服男である。
「オヤッ、木島君じゃないか。どうしたんだ、その顔色は?」
彼はいきなり室内に駈け込んで、若者を抱き起した。
「アア、小池君か。せ、先生は? ……早く会いたい。……重大事件だ。……ひ、人が殺される。……今夜だ。今夜殺人が行われる。アア、恐ろしい。……せ、先生に……」
「ナニ、殺人事件だって? 今夜だって? 君はどうしてそれが分ったのだ。一体、誰が殺されるんだ」
小池と呼ばれた若者は、顔色を変えて木島の気違いめいた目を見つめた。
「川手の娘だ。……その次は親爺の番だ。