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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
恐怖城
「すぐその向うに細い村道があるので、そこを二三丁行って、右に折れた山裾に、例の城郭が建っているのです」
二人は闇の中に、ムクムクと起き上り、塵を払って、スーツ・ケースを下げると、畑を踏んで村道に出た。
雑木林を過ぎて、右に折れ、雑草を踏み分けて、こんもりとした森の中へ入って行くと、行手の木の間に、チロチロと燈火が見えた。
「あれですよ」
「なる程、山の中の一軒家ですね」
しばらく行くと、森の切目から、夜目にも白い土蔵づくりの不思議な建物が見え始めた。なるほど城郭である。屋根のつくりにも、何かしら天守閣を思い出させるようなところがある、高い土塀も見えて来た。なお近づくと、土塀の一ヶ所に、いかめしい門があって、その前に堀の跳橋が吊り上げられているのが、ぼんやりと、まるで夢の中の不思議な城門のように眺められた。
「変った建物ですね」
「お気に召しましたか」
二人はそんな冗談を云い交して、低い笑い声を立てた。
恐怖城
その城郭のような一軒家に到着すると、川手氏は先ず、広い邸にたった二人で留守番をしている老人夫婦に引合わされた。夫婦とも見た目こそ頑丈な老人であったが、気だては至極淳樸な田舎者、これなら身の廻りの世話をして貰うにも気が置けないし、その上護衛の役も勤まると、川手氏も大気に入りであった。