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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
そして俺達が復讐の為にどんなに骨折ったかを御報告しよう。サア、京子、今が最期だよ」
その言葉が終るか終らぬに、妹の色を失った唇から「ウーム」という細い鋭いうめき声が漏れて、彼女はクナクナと床の上にくずおれてしまった。
兄はうめき声さえ立てなかった。ただ青ざめた顔に、見る見る玉の汗を浮べて、苦痛を堪える様子であったが、遂にその力も尽きたのか、彼の大きな身体は、妹をかばうように、折重なってその上に倒れ、兄も妹もそのまま動かなくなってしまった。
人々は何が何やら訳が分らず、あっけにとられて、ただこの有様を眺めるばかりであった。
やがて、明智小五郎が、何に気附いたのか、二人の死体の側に身をかがめ、その唇を開いて、口中を調べていたが、しきりと肯きながら立上ると、低い声で呟いた。
「アア、何という用心深い悪魔だ。二人とも奥歯に金の義歯を篏めていたのですよ。その義歯の中が虚ろになっていて、強い毒薬が仕込んであったのでしょう。いざという場合には、たとえ手足を縛られていても、その義歯の仕掛けを噛み破って、中の粉薬を飲み込みさえすればよかったのです。
皆さん、悪魔の狡智は、考え得るあらゆる場合を計算に入れていました。