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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
まさかもう一度死体を盗み出そうというんじゃないでしょうね」
「そんなことが出来るもんか。僕達がこうして見張っているじゃないか。そうじゃないよ。犯人の目的は、ただ僕への挑戦さ。僕が葬儀車の扉に目をつけるだろうと察して、僕に見せつける為に、指紋を捺して置いたのさ。なんて芝居気たっぷりな奴だろう」
宗像博士は事もなげに笑ったが、あとになって考えて見ると、犯人の真意は必ずしもそんな単純なものではなかった。この葬儀車の指紋は、同じ日の午後に起るべき、ある奇怪事の不気味な前兆を意味していたのであった。
それはさて置き、当日の葬儀は、極めて盛大に滞りなく行われて行った。葬儀車とそれに従う見送りの人々の十数台の自動車が、川手邸を出発したのが午後一時、電気炉による火葬、骨上げと順序よく運んで、午後三時には、雪子さんの御霊は、もう告別式会場のA斎場に安置されていた。
事業界に名を知られた川手氏のこと故、告別式参拝者の数も夥しく、予定の一時間では礼拝しきれない程の混雑であったが、斎場の内陣に整列して、参拝者達に挨拶を返している家族や親戚旧知の人々の中に、一際参拝者の注意を惹いたのは、最愛の妹に死別して涙も止めあえぬ川手妙子さんの可憐な姿であった。