Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
にほんばし
日本橋
泉 鏡花
Read 日本橋 (にほんばし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,697 characters · 177 screens
羆の筒袖
二十九
踵を臀の片膝立。すべりと兀げた坊主頭へ縞目の立った手拭の向顱巻。円顔で頬皺の深い口の大い、笑うと顔一杯になりそうな、半白眉の房りした爺さま一人、かんてらの裸火の上へ煙管を俯向け、灰吹から狼煙の上る、火気に翳して、スパスパと吸って、涎掛の飴屋と何か云って、アハハ、と罪も無げに仰向いて笑った、……その顔をこっちで見ると、葛木に寄縋って、一石橋から来たお千世が、
「ああ、お爺さんが。」と云うと斉しく、振払うようにして駆出したのであった。
「可愛いわね。」
それを透かして、写絵の楽屋のごとき、一筋のかんてらに、顔と姿の写るのを、わざと立淀んで、お孝が視めて、
「ねえ、ちょいと。……生意気盛りの、あの時分じゃ、朋輩の見得や、世間への外聞で、抱主の台所口へ、見すぼらしい親身のものの姿が見えると、つんと起って、行きもしないお稽古だの、寝坊が朝湯へ行き兼ねないのに、大道さなか、(お爺さん。)――ええ、お千世はあの人の孫なのよ、――可愛ッちゃないのねえ。」
羆の筒袖
二十九
「阿爺どの、阿爺どの。」
「はい、私かねえ。」
橋から橋へ、河岸の庫の片暗がりを遠慮らしく片側へ寄って、売残りの草花の中に、蝶の夢には、野末の一軒家の明窓で、かんてらの火を置いた。