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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

Read 日本橋 (にほんばし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,697 characters · 177 screens

Aozora Bunko

荷は軽そうなが前屈みに、てくてく帰る……お千世が爺の植木屋甚平、名と顱巻は娑婆気がある。

背後をのさのさと跟けて来て、阿爺どの。――呼声は朱鞘の大刀、黒羽二重、五分月代に似ているが、すでにのさのさである程なれば、そうした凄味な仲蔵ではない。

按ずるに日本橋の上へは、困った浪花節の大高源吾が臆面もなく顕れるのであるが、いまだ幸に西河岸へ定九郎の出た唄を聞かぬ。……もっともこのあたり、場所は大日本座の檜舞台であるけれども、河岸は花道ではないのであるから。

変な好みの、萌葱がかった、釜底形の帽子をすッぽり、耳へ被さって眉の隠るるまで低めずらした、脊のずんとある巌乗造。かてて加えて爪皮の掛った日和下駄で、見上げるばかり大いのが、もくもくとして肩も胸も腹もなく、ずんぐり腰の下まで着込んだのは、羆の皮を剥いた、毛をそのままにした筒袖である。

これがもし対丈で、赤皮の靴を穿けば、樺太の海賊であるが、腰の下の見すぼらしさで、北海道の定九郎。

見よかし羆の袖を突出し、腕を頤のあたりへ上げ状に拱いた、手首へ面を引傾げて、横睨みにじろじろと人を見る癖。

「帰るのかあ。」