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えどまえのつり
江戸前の釣り
三遊亭 金馬
Read 江戸前の釣り (えどまえのつり) by 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,910 characters · 214 screens
どんな高く買うくず屋が見ても、二等車に乗るなりじゃありませんよ」
といっていた。
ある冬、未知の人から小包が届いた。あけてみるとりっぱな皮の手袋である。あとからの手紙で、
「先日、電車の中でお目にかかったが、師匠の手袋に穴があいていた。人気商売のお方ゆえ、失礼ながらお使いください」
と書いてあった。思い出してみると、そのときは、釣りの帰りで、軍手の指先を切ったのをしていた覚えがある。
戦前、東宝劇場の遺失物は、一年間保存しておいて受取人がこないと競売していた。その中に女物の手袋が一番多いが、どうしたものか、みな片方と決まっていた。
それが銭湯の着物を入れるザルにいっぱい出る。見ると、女の子の持ち物だけに、赤あり、青あり、指先の切れたのもあるが、釣りに使うには、わざわざ指先を切る。それを釣り場で釣友が見て、
「右が青、左が赤とはおもしろい手袋ですね」
とからかわれた。
りっぱな釣り会のバッチをつけた人が、ドロだらけの釣り服で平気で腰をかけているのも困りものだ。釣った魚の網ビクを、さも自慢顔にぶるさげているのも他人迷惑になる。
これはぼくばかりではないだろうが、なるたけ、はなし家とわからないような服装をして往来を歩くものだ。