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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

Read 江戸前の釣り (えどまえのつり) by 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,910 characters · 214 screens

Aozora Bunko

釣りと迷信

現在はそんなことをする舟はなくなった。

釣りと迷信

釣りと迷信。何も釣りに結びつけなくとも、理学、科学という世界でも迷信というものはある。第一に魚釣りに行くときの弁当に、真夏といえども梅干しを入れない。

そんなことを知らない人は持って行くが、友だちが、

「きみ、弁当に梅干しを入れてきたのか、そりゃあ釣れないよ」

といって、いやがる。自分だけ食べなければよさそうなものを、他人さまのことまで干渉する。いわれた人が迷信打破をしようとも思わないので、一般釣り師が梅干しをいやがるようになったものか。

「食わないときに食うのは釣り師の弁当」

というのがある。

江戸小ばなしに、

オシ、釣りに行き、昼ごろになっても一尾も釣れぬゆえ、友だちが大きな声で、「めしにしよう」といえど聞こえず。

友だち そばへ行き、食べる手まねをして見せれば、オシ、大きく首を振り、

「いや、まだ一ぺんも食わねえ」

平常、家では、あれは食えない、これはだめだと食べものにうるさい人でも、春先の野釣りで、土手べりへ腰をおろして菜の花を見ながら、ヒバリの声を聞き、ウキを眺めて食べる弁当は、それこそタクワンの香々だけでうまく食べられるものだ。