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えどまえのつり
江戸前の釣り
三遊亭 金馬
Read 江戸前の釣り (えどまえのつり) by 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,910 characters · 214 screens
「正月五百人位までの下足は一人も間違いなく十分間で出せる」と威張っていた新石町立花亭の名物男、徳爺みたいな下足もなくなって、正月でも芸人の名前入りの印絆天を着なくなったので、絆天は染めてあっても船頭にも下足にも盆暮れともに出さなくなった。
昔者は何でも昔のことを褒めるといわれるが、往来で煙草入れを拾って年寄りに見せたら「何だこんな物、俺の若い時分にはもっと好いものが落ちていたもんだ」という江戸小咄がある。春狂言三人吉三の台詞にも、
「月も朧に白魚の」と大川といった時分の隅田川、東両国百本杭あたりでシスターボーイのお嬢吉三が一寸の間に百両の仕事をして夜網で白魚が捕れて、昼は何時でも野鯉釣りが五、六人は必ずいた。「酔月情話」の箱屋峰吉がお梅に殺された浜町河岸で、ぶっ込みでセイゴや鰻が釣れて、「笹龍胆」や「庵もっこ」の紋を染め出した白い幕が張ってあって、「大竹流」、「向かい流」という看板の出ている水練場で泳ぎながら帽子にいっぱい蜆が捕れ、家へ持って帰って明くる日のおつけの味にしたことも、ついこの間のように思われる。
首尾の松あたりで「千かきに一本」の鰻かきで捕った魚を江戸前鰻といった時代、本所石原の大川端に行田屋という舟宿があって、僕の親父はよくここの家から釣りに出ていた。