Japanese reading practice

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

狂炎地獄

――何もいらねえでがすから、どうか、伜の唖野郎が、一日も早く山へ帰って来るように、探しておくんなさい」

主水は、父の郷左衛門と眼を見合せて、ちょっと苦笑を洩らしたが、無智な者を欺すように、軽っぽく頷いて、

「よしよし、案じることはない、唖の岩松は、今にきっとお前の手に返してやる」

「えっ、返してやる? じゃおめえ様方が、隠したのじゃねえのかい」

「ば、ばかなことを申せ。あんな、薄野呂な唖聾を隠したって何になるか」

「それやそうだ……」と、作兵衛はがっかりした顔で、

「ところで、おめえ方の頼みというのは、何だね」

「きょうは竈に火を入れる日か」

「あ。今、三番竈に火を入れる支度をしているところだ」

「それや好都合だった。ほかじゃないが、そちの炭焼竈で、人間の体を一箇、こんがりと焼いて貰いたいのだが……」

狂炎地獄

「えっ、人間を焼いてくれって」

純朴そのものに出来上がっている作兵衛老爺は、眼をまろくして驚いた。

「嫌か」

主水は、彼を睨みつけて、刀の柄に手を乗せながら、

「嫌と申すか」

「い、いえ、嫌とは、言わねえでがすよ」

「そうだろう、常々のご恩顧を忘れて、嫌だなどと言えばただはおかん」