Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

友を撲る

と、揃って、頭を掻いた。

友を撲る

昼は人いきれと熱鬧の埃に割れ返りそうな博物会の巨大な小屋も、夜は、物の怪でも出そうに真っ暗だった。丸太組のたかい天井を蔽っている暗灰色の布が、象の皺のような浪を立てて、はたはたと深夜の空にうごいている。昼の見物人が捨て散らした紙屑が、洞然たる無人の会場に、生きもののように、ひらひらと、飛んでいる。

淋しい、夜番の灯が、ぽちッと、隅の方に二つばかり……。

それも、何かの、眼みたいに見える。

「なあ、波越。なんだってこんな真夜半、蝋人形の張番をさせるのだろう。羅門塔十郎も時々、奇功に逸って、分らない指図をするぜ」

「いや、あの頭脳のいい先輩のことだから、何か、狙いどころがあるんだろう」

「しかし、窮命されているようだな。……オヤオヤ、夜番に貰った火種も消えてしまった」

「寒いなあ、そこに蓆があるから、それでもかぶっていよう。やがて、夜が明けるだろう」

と、霜除けをかぶった寒牡丹のように、ぶるぶると、歯の根を噛んでいるのは、今夜の見張をいいつけられた加山、波越の二同心だった。

しばらくすると、こんどは波越の方から――

「だがなあ加山、おれはまた、しみじみと奉行勤めがいやになって来だした」