Japanese reading practice

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

白む朝窓

ふいに、舟辰が戸を開けたので、彼は、あっと声を発して、老先生のからだを、戸口に抛りすてるや否、さっと、隠れた。

迅い!

蝙蝠の変化みたいに、身がかるい。

――一方では、同心の加山耀蔵と、あの唖男が、河岸ぷちの砂利場で、組ンず、解れつ、争っていた。

唖の侮りがたい力量は、波越八弥と彼とが、二人がかりでも、さんざんに、三本錐で傷つけられた覚えがある。だが今夜の耀蔵は、そら死にをしている間に、充分な、準備と覚悟があった。反対に、唖は、ふいを食らって、だいぶ面食らっている。

鍛えぬかれた小具足術の秘力は、機先を制して、のっけから唖を圧倒した。隙間を与えない鉄拳と張手の攻撃は、唖の、頭、頬げた、向うずね、所きらわずにいためつけた。

砂利山のうえで、ふたりは取っ組んだ。ずぶずぶと、足もとがくずれるので、すぐに、同体にころがったと思うと、耀蔵は、すばやく、十手を口に、捕縄を解きかけた。

唖は、縄に、しがみついた。

その手を、十手で、二つ三つなぐりつけると、さすが、強頑な唖も、手を離して、逃げかけた。

「こいつめ、どこへ行く」

うしろから、こんがらかった捕縄を、そのまま、浴びせかけて、首にひっかけて、引き倒した。