Japanese reading practice

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

鈴慕の曲

彼の捕術の恩師、江漢老先生。

彼の刎頸の友たる同じ南の同心加山耀蔵。

その人々は、その夜、どんな夢も見なかったであろうか。夢、夢、せめて夢にでも通え!

彼の無念極まるこの最期を、彼の味方に告げるものは、夢よりほかには頼みがない。

鈴慕の曲

江戸の笛師殺し、江の島の巫女殺し、指切りの殺人魔と目されて、遂に、江之島神社の境内で召捕られた塙郁次郎は、何故か、すぐに江戸表へは護送されなかった。

島役所の納屋蔵は、さしずめ、彼の仮吟味所となった。郁次郎は毎日毎夜、東儀与力と羅門塔十郎のふたりが交代になっての調べに、拷問され続けていたのである。

四日――五日――七日と――

相手は、交代して休息するが、郁次郎は少しも寝かされなかった。夢、うつつである……。そして割竹の苛責、折れ弓の拷問。

皮肉はやぶれ、精神はもうろうとなってしまった。

「しめた! 自白したぞ」

明け方から根気よく、納屋蔵に籠って責めていた東儀与力は、口書を引っ掴んで、羅門のいる役室へ飛び出して来た。

「なに、自白したと」

と、羅門も緊張して乗り出した。

「ム。ずいぶん強情な奴だが、とうとう笛師のお雪を殺害したのも、巫女殺しも、みな自分の所業だからはやく死罪にしてくれと泥を吐きおった」