Japanese reading practice

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

「よし、よし」

と、左近将監は、かろく頷いて、

「したが、老人、ひどく窶れたのう」

「一夜のうちに、白骨になるほど心労いたしました」

「そうあろう。誰しも、わが子の愛に変りはない。いわんや、一代の名与力、塙江漢の一子が、極悪人として断罪にされては、末代までの恥辱、いや、天下の人心に及ぼすところも尠なくはない。――おお、こうしている間に、郁次郎が刑に処されては相成るまい。老人、これを携えて、はやく、町奉行の榊原主計殿に、願いの旨を、申し入れるがいい」

と、一通の書付を手わたした。

「あ。これは?」

と、老先生の手は、指は、つよい感激にふるえを刻んでいる。

「御老中太田備中守様のお書付。時刻がないゆえ、何かの手続きは後にゆずるとして、とりあえず、郁次郎の処刑に対して、百日のご猶予をおゆるしあったのじゃ」

「えっ! あ、あの、百日」

――鐘が鳴った。朝の六刻である。

郁次郎の刑される明けの鐘は、郁次郎の生命に一縷の光明を投げた黎明の鐘となった。

「オオ!」

と、老先生は、狂喜の手に、老中太田備中守の書付をつかんで、奉行所の門内へ走りこんだ。

挑戦

「――鳴った。六刻の鐘だ」