Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens
と、一蹴して、
「その密約が成り立つと、汝は、指一本を、千金に売った。郷左衛門は、その指一つを手にするごとに、龍山公の血統が絶滅してゆくのをよろこび、やがて、伜の主水を、主家の世継に立てる悪謀を夢みていた。その悪謀につけ入って、汝は、おのれの情婦としている玉枝を、偽落胤に仕立てあげて、主水の正室にすることを約束している。――そして亀山六万石を、あの愚か息子と、芸人上がりの玉枝とで、二つに頒ける魂胆であった」
「う、うぬ。――まだ申すか」
「汝に代って、懺悔をしてつかわすのだ」
「懺悔? 片腹いたいことを申すな。おのれの一子郁次郎の罪悪はつつんで」
「あれにも落度はある。しかし、法を犯したものではない。女笛師のお雪が、旅芸人であった頃、彼はふと、遊学先の長崎で、その美貌にひき込まれて、恋に落ちたまでのことだ。彼は、気が小さい、そして善人すぎるために、わしにそれを打ち明け得なんだ。そして、この江漢には、まだ江戸表へ帰らぬていにしておいて、許嫁の花世どのに、苦しい胸を打ちあけた。それが、五百之進殿の耳にはいったため、すべてを婚儀の前に、内密に済まそうとしたのが間違いだった。