Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens
恐怖と驚愕
庭垣も、式台も、至って質素な玄関である。ふたりは静かにそこに立って、
「たのむ」
と、奥へ言った。
恐怖と驚愕
静かに、ふすまの辷る音。
小間使である。手をついて、
「あの、どちらさまでござりましょうか」
「花世どのは、ご在宅かの」
と、東儀与力が代って、軽く、ふたりの姓名を告げる。
「お嬢様はただ今、よそにお出ましで、お留守でござりますが」
「ははあ、それではまた、白魚橋の水天宮へご日参ではござらぬか」
「ま。よくごぞんじで……」
「いつぞやも、その途中でお目にかかりました。では、ご主人の五百之進殿は」
「その旦那様は、ちと前から、お知行所の下総の方へお旅立ちで、まだお帰りがござりませぬ」
「やれやれ」
と、塔十郎の顔をふり顧って、眼で、何か語らいながら、
「ではお留守中をぶしつけながら、花世殿のお帰りまで、玄関脇のお部屋でも拝借して、お待ちうけしたいと思うが、どうであろう」
「さ、私には計らいかねますが……」
「用人はおらぬのか」
「至って、無人なおやしきでございますから」
「案じることはない。お目にかかればすぐわかることじゃ」
と、草履をぬいで、
「羅門氏、そうしようではないか」