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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens
東儀は一も二もなく同意をして、すぐその奇計にとりかかる決意を洩らしたが、羅門はまた考え直して、それをやるにしても、一応は江漢先生の意見を求めるのが順当でもあり、また礼儀であろうと言い加えた。
智に富むばかりでなく、礼にも厚い彼の床しさに、東儀はいよいよ敬服して、
「では早速、手前は鶉坂へご相談に参り、帰り道には薬研堀の亀八を訪ねて来るといたしますから、羅門氏には、また、明日でもここへご足労を願われまいか」
奉行所へ立ち寄って、与力部屋のぬるい茶を喫むとすぐに、彼はこう告げて、忙しげに出て行った。
鶉坂の塙老人は、東儀与力の顔を見ると、相変らず、平和に恵まれた柔和な相をくずして、
「おう東儀か、どうじゃなその後は。……なに少しも探査が捗らんと申すか。それもよかろう、貴公たちには難事件にぶつかる程よい修業じゃよ。……わしか? ははは、わしは無為無病、いつもこの通り頑健じゃ。そのうちに、郁次郎も長崎表から帰るのでな。子息の帰るまでに、なるべく養生所の準備もしておいてやりたいし、帰ればすぐに、花世との婚儀じゃ。イヤ、これでなかなか忙しいんじゃよ」
と、頗るな機嫌である。