Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

席は、愛縄堂で、あの悪像を回向し、その後で酒もよし、三味もよし、席画もよし。

老人に指導をうけた八丁堀の若手や、難事件に墜ちて手にかかった人々などが、相談をまとめてから、この話を、鶉坂へ持ちこんだ。

「なんじゃ、捕縄供養とは?」

「前例のないことですが、老先生のようなお方も、前後に珍しいことですから」

「で、どんな事をするというのか」

「こちらの愛縄堂を拝借して、名月の夜は、心ある者が集り、あの老先生の手彫りの悪霊どもを供養しまして、序ながら、ご隠退を惜しみたいと存じますので」

「でも、わしはもう、とうにお役退きをしておるンじゃ」

「けれど、世間では、こんどのご普請で、初めて老先生のお覚悟をはっきりと知ったのですから、古いお馴染がいに、一夕ぐらい、ゆるゆると、お膝を合わせて語りたいと熱望しております」

「そうか。……じゃ皆のよいように、やって貰おう」

拒みかねて、老人も遂に、任した。

やがて、案内状は、知人の間へ配られる。そして間もなく、捕縄供養のその日が来た。

仲秋の名月――八月十五夜。

実にいい月であった。盛会であった。

しかし、この晩! ああこの晩!

彼が、塙隼人の若い時代から、多年の間、十手にかけ、捕縄にかけて、獄門台へ罪人を送るごとに、一体、二体と刻んで来た無数の手彫の悪像どもが、こぞって祟りを初めたのだろ