Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Read 猟奇の果 (りょうきのはて) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 134,971 characters · 270 screens
そうなると深窓に育ったお嬢さんには、何の思案も浮ばぬ。ただ腹が立つ。激昂の余り云い度いことも充分には云えない。どうしようどうしようと門前に立ち尽している内に、自然頭に浮んで来るのは、慈悲深き父伯爵のことだ。そうだ。お父さまなら、まさか娘を見違えはなさるまい。父さまにお会いしよう。それがいい。それがいい。と心を極めて遠くもあらぬ首相官邸へと、トボトボ歩き出した。
道行く人が振返って眺めて行く。何となく艶かしい乞食だからだ。併し、美禰子さんにしては夢にも考えたことのない屈辱の道中だ。いきなり地面へ泣き伏したい程の気持を、やっと励まして歩いて行く。
二三丁歩いた時分、けたたましい警笛に飛びのいて見送ると、見覚えのある自邸の自動車。誰かしらと怪しむ内に、車は遠く隔って行った。美禰子さんは気附かなかったけれど、その車には伯爵令嬢になりすましたさっきの乞食が乗っていたのだ。行先は同じ首相官邸。機敏な彼女は先廻りをして、美禰子さんが父伯爵に会うことを妨げようとする積りだ。
暫くして美禰子さんの乞食女が官邸門前にたどりついた時には、旨を含められた門番の親父が手ぐすね引いて待ち構えていた。