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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Read 猟奇の果 (りょうきのはて) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 134,971 characters · 270 screens
主婦は襖を開いて置いて、それが合図なのであろう。一種異様の咳払いをした。すると、これはどうだ。押入れの天井にポッカリと穴があいて、そこから真赤な電燈の光りが射して来た。天井板と見せかけて、その実上げ蓋になっているのだ。
「だが、この家は平家建てだ。二階がある筈はないが」
と思っていると、天井からスルスルと縄梯子が下り、それを伝って、一人の小女が降りて来たが、召使であろう。彼に一礼してその場を立去った。
「お危うございますが、どうかこれを」
と主婦が云うままに、青木はその縄梯子を昇った。
上って見ると、そこに奇妙な部屋がある。床は畳だけれど、天井も四方も一様の新しい板壁で、桝をふせた様に窓も床の間も押入れもない。その癖、部屋の真中には新しい………………………、大きな丸胴の桐の火入れには、桜炭が赤々と燃え、銀瓶がたぎっている。天井からは小型ではあるが贅沢な装飾電燈が下っている。その電燈の色が血の様に真赤なのは、何か理由があるのであろうか。
分った分った。平家建ての屋根裏に、こんな密室を新しく作ったのだ。実に名案である。外から見たのでは、普通の平家建だから、下の部屋部屋に異状がなければ、とがめる者もあるまい。