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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Read 猟奇の果 (りょうきのはて) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 134,971 characters · 270 screens
待ち遠い時が、十分二十分とたって行った。
だが、とうとう、階下から合図の咳払いが聞えた。婦人はハッとして視野から影を消すと、上げ蓋を開いて、縄梯子をおろす音、やがて、ミシミシと何者かがそれを上って来る気配。
青木は左手を闇に伸ばして、蹲っている品川の肩をソッと叩いた。今来るぞという合図である。品川はビクリと身体を固くした。
青木の視野に、先ず婦人が戻って来た。
「大変待たせましたね」
アア、それは品川四郎その人の声ではないか。
「それ程でもなくってよ」
婦人の唇が動いて、トーキーみたいに喋る。
外套がポイと投げ出され、その襟の所丈けが視野に這入る。それから、黒い洋服の腕が、青木の前で、スーッと弧を描いたかと思うと、やがて男の全身が、彼も又酔っているのか、フラフラとそこへくずれた。向うを向いているけれど、間違いなく昨夜の男、即ちもう一人の品川四郎である。
青木も流石に胸がドキドキして来た。今こそ両品川の異様な対面が行われるのだ。
彼はソッと目を離して、闇の中に品川の腕を探り、それを掴むと軽く引いた。だが、品川はブルブル震えて立とうともしない。青木は掴んだ指先で「何をグズグズしているのだ」