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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
と臍を噛んだ。
ひとくちに多々羅ヶ浜といっても、南は筥崎ノ宮から北は香椎手前の丘陵線までの渚一里半、芦、泥田、砂原などの広い平野もふくんでいる。
そして、総じてここらは、元寇ノ役の遺跡だった。
国をあげて、外敵にそなえた日の防柵や石垣や乱杭の腐木などが、今も川床や草の根に見あたらなくはない。
菊池武敏は、浜をひだりに、箱崎の松原を、ひがしへ出た(現・九州大学附近)。――秋月、星野、草野、黒木党などを両翼に、少しさがっては、松浦党だの神田党など、どっちをみても、味方の軍勢で、野も海辺も埋めつくしていた。
「敵はどれほどかある?」
武敏の問いに、
「ざっと二千余」
といったのは、大物見からいま返って来た赤星六郎兵衛で、
「それ以外な隠し勢は、よも、あるまいかと思われます」
と、つけ加えた。
武敏は馬上でうなずきながら、かぶとの眉廂に手をやって顔をそむけた。――敵のいる陣ノ腰から名島の方を望むたびに、その真っ向から吹きなぐッて来る北風が、かぶとの鉢金やよろい金具に砂音をたて、皮膚の出ている部分は痛いほどだった。
「越前。彼方の小川は」
「須恵川の水です」
そう答えた城ノ越前守へ、武敏がすぐ一令をくだしていた。