Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens
路頭の子
するとまた、青侍の足音がして、思わぬ客の来訪を告げた。
「……誰だ。客とは」
「河内守正成どのでございまする」
「楠木が。……?」
いちど、黙考してから。
「また来てもらおう。今日は播磨へ発向の先発をえらび、かたがた、軍議に一日を要する。御用あらば、また明日にでも来給え、と申してやれ」
路頭の子
たそがれ、正成は、京での居宅、六条油小路の門で、駒を降りた。
ひる、義貞を三条高倉の邸におとずれたが、会えなかったので、玄恵法印をたずね、また、二、三の知人を訪うてもどったのだが、彼の行く先はみな時流の外にある僧や学究の家だった。好んで今を時めく権門を避けているような彼にもおもわれる。
「お帰りなされませ」
帰れば、いつもまっ先にとび出してくるのは、赭顔白髪の老臣恩智左近で、
「やれやれ、さぞやお疲れで」
と、正成の手から駒のたづなを取るとすぐ、正成の顔を読んで、その出先から胸のうちまでを、ちゃんと見てしまうのも、この左近であった。
油小路の邸は、正成が和泉河内の守護をかねて、摂津昆陽野の代官を管理する身となってから賜わったいわゆる「在京公務所」だった。だからどこにも私邸らしさはない。