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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

Read 高島異誌 (たかしまいし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,007 characters · 26 screens

Aozora Bunko

「……俺との縁は是で切れた! 安心しやれ安心しやれ!」嗄れた笑声を響かせたが「女の切髪気を付けよ、気を付けよ!」

その後は森然と物寂しく、何んの音も聞えない。ただ月明に梅花ばかりが白く匂っているばかりである。

「それはさぞ恐ろしゅうござったろう」医師千斎は純八の口から、以上の物語を聞かされると、身の毛も慄立てて驚いた。そうして暫時考えていたが、

「今後は充分注意なされて、二度と再び妖怪共に魅入られぬようなさりませ。今度魅入られたら一大事、二つ無い命を取られようも知れぬ」

「いや充分に気を付けましょう」

「当分外出などはなさらぬがよい」

「仰せに従い此処一、二ヶ月は、家に籠ることに致しましょう」

其処へ松太郎も訪ねて来たが話を聞くと斯う云った。

「小坂の観音の梅の古木こそ、ちと怪しいではござらぬかな」

「左様、恐らく洞穴にこそ、妖怪は籠って居るのでござろう」千斎老医も頷いて云った。

「調べて見ようではござらぬかな。その梅の木の洞穴の中を」松太郎は千斎に斯う云った。千斎は手を揮り、顔色を変えたが、

「滅相も無い事仰せられるな。迂濶にそんな事為ようものなら、それこそ悪神の怒りに触れて、どのような兇変を受けようも知れぬ。