Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
理不尽にも、土足のまま、小舟の中へおどり込んできた者たちは、たちまち、苫をはねて、川の中へ蹴散らかし、
「お改めだ」
「神妙にしろ!」
飛び寄った一人、弦之丞の片手を取り、ズルズルと前へ引きずりだそうとすると、足をすくわれたか、その影が、猫回りに、舟縁を越えて、時ならぬ水音、ザアーッと、一面の飛沫に、川面を夕立のようにさせた。
「やっ!」
ひるみ立つ影がいっせいに端へよると、船は中心を失って、覆りそうに水を噛んだ。
「手ッ、手むかいいたすか!」
鋭い声を放った者の拳に、キラリと光ったのは、銀みがきの十手――「東奉行所」と印した提灯の明りと共に、ズイと迫って、弦之丞の眼を射た。
「オオ? ……」
唐突の驚きと、常に、それと心を措く思い違いで、ひとりふたりの者を投げたが、さては、阿波の侍ではなかったかと、弦之丞、少し居ずまいをなおしながら、
「これは、東奉行所の御人数でござったか」
というと、先はいっそう力味を入れて、
「きくまでもないこと。これが見えぬか!」
「しかし、それにしては腑に落ちぬ御作法、上役人ともある方々が、なんで、吾らの繋り舟へ、会釈もなく踏みこみ召された」