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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Read 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) by 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,693 characters · 377 screens
十八
それからこの大会も済んだ頃まだ火事は消えず、新築の中村座が焼失したという事を聞いたので、それでは猿男桃雨氏の宅も焼けたろうから見舞って遣らねばならぬといって、私が率先して子規氏や古白氏や松宇氏などと駈着けて見ると、幸に類焼はしなかったが、道具なども片付けて手伝いの人も出入りしていた。そこで例の見舞い客に振れ舞う土瓶らの茶碗酒を我々にも飲ませたが、我々はそこへ腰をかけたままで、もう火事の句数句を作る、また主人も作るという風で周囲の他の人々は呆れ顔をしていた。その頃の我々の俳句に熱心であった事はこの一事でも判るのである。
十八
この年から翌年頃へかけてが、私どもの俳句に熱狂していた盛りである。同人が互に往来して俳句を作り俳談を闘わすのみならず、例の各派を合した会なども度々催して、その頃は多くが書生であるから、家を持った私どもの仲間が順番に会席を引受けて、ちょっとした飯と酒とを出す事になっていた。就中宇和島人の二宮兄弟は熱心であったから、その弟の孤松氏宅や、その兄の素香氏を通して仲間に入った桜井静堂氏宅と、私宅では、頻繁に開会した。そうして子規氏は何といっても先覚で中心点ではあるが、この頃いうデモクラシー的に何ら先生顔もしない、そしてわれわれも先生らしくは扱っていないのである。