Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Read いやな感じ (いやなかんじ) by 高見 順 (たかみじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 292,113 characters · 587 screens
俺はじっと見つめていたが、ふと気がつくと闇のなかに白く浮き出たその俺には肉体がない。鋳型をすっぽり黒い砂から抜いたみたいに、実体がない。しかもそれは俺なのだ。俺は白いがらん洞の空間にすぎないのだが、それにもかかわらず、それは俺として闇のなかを歩いている。
「図(四)」のキャプション付きの図
図(四)
白い空間だけで、実体はない。しかもそれは俺なのだ。それが俺でありうるのは、白いがらん洞を包むまわりの闇が何かしっかりと充実しているからだ。闇というより、そのほうに実体がある。実体のない俺は、まわりの実体によって成立している。
そんな俺を眺めて、今は恍惚としていた。狼狽を忘れて俺は恍惚としていた。
梅雨の季節になっていた。俺は次のような詩を書いた。
雨が降る
眠っているとき
起きているとき
両方にわたって
雨が降る
ふたつの世界に
雨が降る
詩と言っていいかどうか分らぬが、俺にはこれが詩なのだ。
俺が眠っているとき、俺が起きているとき、外界は客観的に変りはない。俺が起きているときでも、眠っているときでも、世界は同一だ。
しかしこの俺にとっては、それは二つの世界なのだ。そこのところをうまく説明できないが、客観的には同一でも主観的には二つの世界だというようなことではないのだ。