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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
船舶局の原簿によると、北海丸の沈没は十月七日とあった。その日は北太平洋一帯に、季節にはいって始めての時化の襲った悪日だった。親潮に乗って北へ帰る鯨群を追廻していた北海丸は、日本海溝の北端に近く、水が妙な灰色を見せている辺で時化の中へ捲き込まれてしまった。
最初に救難信号を受信つけたのは、北海丸から二十浬と離れない地点で、同じように捕鯨に従事していた同じ岩倉会社の、北海丸とは姉妹船の釧路丸だった。釧路丸以外にも、附近を航行していた汽船の中には、その信号を聞きつけた貨物船が二艘あった。しかし、海霧に包まれた遭難箇所は、水深も大きく、潮流も激しく、荒れ果てていて到底近寄ることは出来なかった。
小船の北海丸は、浸水が早く沈没は急激だった。海難救助協会の救難船が、現場に馳せつけた頃には、もう北海丸の船影はなく、炭塵や油の夥しく漂った海面には、最初にかけつけた釧路丸が、激浪に揉まれながら為す術もなく彷徨っているばかりだった。
S・O・Sによれば、遭難の原因は衝突でもなければ、むろん坐礁、接触なぞでもなかった。ただ無暗と浸水が烈しく、急激な傾斜が続いて、そのまま沈没してしまった。