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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
しかし、まだ老朽船と云うほどでもない北海丸が、秋口の時化とは云え、何故そんなに激しい浸水に見舞われたのか、それは当の沈没船から発せられた信号によってさえも、聞きとることは出来なかった。捜査は、救難船と釧路丸の手によって続けられた。けれども時化があがって数日たっても、北海丸は発見されなかった。
それから、もう一年の月日が流れている。
根室の港には、やがてまた押し迫って来る結氷期を前にして、漁期末の慌しさが訪れていた。
「どかんと一発撃てば、それでもう、三十円丸儲けさ」
夜になると底冷えがするので、もう小さな達磨ストーブを入れた酒場では、今夜もまた女の愚痴話がはじまっていた。
「人間なんて、あてになるもんじゃないよ……ね、そうじゃない? 丸辰のとっつあん……」
「みんな、鯨の祟りだよ」
丸辰と呼ばれた沖仲士らしい老水夫は、酒に焼けた目尻をものうげに起しながら、人々を見廻わすようにして云った。
「鯨の祟りだよ。仔鯨を撃つから、いけないんだ」
「とっつあん。また、ノルウェー人かい?」
トロール漁船の水夫らしい男が、ヤジるように云った。
鯨の祟り――しかしそれは、一人丸辰の親爺だけではなく、北海丸の沈没の原因について、根室港の比較的歳取った人々の間に、もうその当時から交されていた一つの風説だった。