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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
私は思わず水面を見た。
この小さな海の袋小路の上には、どろどろした、濃い、茶褐色の薄穢い泡の群が、夥しく漂っている。そしてそれが、入江の奥へ行くに従ってどんどん密度を増し、とうとう一面の泡の海と化して来た。
「この辺へ着けよう」
東屋氏の言葉に従って重心板が海の底へ触れないように、なるべく深味のところを選んで私は船を着けた。
恰度私達が、しっとりした岸の上へ降り立った時に、
「シイッ!――」
と東屋氏が、不意に私を制した。
辺りが恐ろしいほど静かになった。と、その静寂を破って、遠く、低い、木の枝を踏みつけるような、或は枝の葉擦れのような、慌だしい跫音が私の耳を掠め去った。誰かが大急ぎで、密林の中を山の方へ駈け込んで行くのだ。
「誰れだろう?」
私は東屋氏を振り返った。が、彼はもう跫音などには頓着なく、五米突ほど隔てた岸に立って、黒い粘土の上を指差しながら私へ声を掛けた。
「一寸見に来たまえ」
そこで私は東屋氏の側へ歩み寄って、指差された地上へ眼を落した。水際の粘土質から草地の方へ掛けて、引っこすったような無数の妙な跡がある。確かに足跡を擦り消した跡だ。
「昨晩、キャプテン深谷氏を殺した男達の足跡だよ。