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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

Read 三国志(五) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.

N1 · advanced · modern kanji and kana · 325,249 characters · 653 screens

Aozora Bunko

腰抜け対手の戦争は退屈だ

いまに曹操が来るだろう

昼寝でもして待つとするか

乞う戦友、耳くそでも取ってくれ

などと悪罵にふしをつけて唄っている。

「待っていろ。目にもの見せてやるから」

歯がみをした曹洪が、城門から押し出そうとするのを見て、徐晃がいさめた。

「丞相のおことばを忘れたか。十日の間は固く守れ。手だしはすなと仰せられた」

しかし、若い曹洪は振り切って、駈け出した。

関中の大軍は、いちどに溢れでて、鬱憤をはらした。あわてふためく西涼軍を追いまくって、

「思い知ったか」と、四角八面に分れ討った。

徐晃の手勢も、ぜひなく後から続いて出たが、

「長追いすな、長追いすな」と、大声で止めてばかりいた。

すると、長い堤の蔭から、突忽として鼓の声、銅鑼のひびき、天地を震わせ、

「西涼の馬岱これにあり」と、一彪の軍馬が衝いてくる。

いささかたじろいで、陣容をかため直そうとする間もなく、

「たいへんだ、敵の徳が、退路を断った」と、いう伝令。

「まずい! 引揚げろ」

踵をめぐらしたときは機すでに遅しである。どう迂回して出たか、西涼の馬超と韓遂が関門を攻めたてている。いや徐晃、曹洪が出払ったあとなので、守りは手薄だし、油断のあったところだし、精悍西涼兵は、芋虫のように、ぞろぞろ城壁へよじ登っているではないか。