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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Read 三国志(五) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.
N1 · advanced · modern kanji and kana · 325,249 characters · 653 screens
「李典か。何事だ」と、大汗を拭いながら振向いた。
李典も、あえぎあえぎ、追いついてきて、
「夏侯都督には、如何なされたか」
「気早の御大将、何かは猶予のあるべき。悍馬にまかせて真っ先に進まれ、もうわれらは二里の余もうしろに捨てられている」
「危ういぞ。図に乗っては」
「どうして」
「あまりに盲進しすぎる」
「蹴ちらすに足らぬ敵勢、こう進路のはかどるのは、味方の強いばかりでなく、敵が微弱すぎるのだ。それを、何とて、びくびくするのか」
「いや、びくびくはせぬが、兵法の初学にも――難道行くに従って狭く、山川相せまって草木の茂れるは、敵に火計ありとして備うべし――。ふと、それを今、ここで思い出したのだ」
「むむ。そういわれてみると、この辺の地勢は……それに当っている」
と、于禁も急に足をすくめた。
彼は、多くの兵を、押しとどめて、李典にいった。
「ご辺はここに、後陣を固め、しばらく四方に備えてい給え。……どうも少し地勢が怪しい。拙者は大将に追いついて、自重するよう報じてくる」
于禁は、ひとり馬を飛ばし、ようやく夏侯惇に追いついた。そして李典のことばをそのまま伝えると、彼もにわかにさとったものか、