Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
「冗談じゃない、そいつはとんだ濡衣だ」と源次郎は云った、「私はおよねさんが桟敷にいるのも知らなかったよ、あのときは、そうさ、まえの晩から友達と飲み続けで」
「芸妓衆もいたでしょ」
「友達のいろさ」
「お友達のいい人があなたにしなだれかかるんですか」およねはまた庭のほうへ眼をやったが、すぐ男を見返ってにらんだ、「あんな見物人のたくさんいる桟敷で、御簾もおろさずおおっぴらでいちゃいちゃしながら、あたしにまで罪な眼つきをなさるんだもの、本当にこわい方よ、あなたは」
「そいつはまったくの濡衣だ、女中に呼ばれて茶屋の座敷へゆくまで、私はおよねさんを見た覚えもないよ、だいいち」と云って彼はまた手酌で飲んだ、「――だいいち、私をこわい男だと思ったのなら、茶屋の座敷へ呼び出すことはないじゃないか」
「憎らしい方ね」およねは溶けるような媚のある眼で男を見た、「世間を知っているひとならしらないけれど、あたしのように世間もよく知らず、男の方のことなんかなおさら知らない者は、あなたのようなそぶりや、あんな眼つきをされれば、もう自分で自分をどうしようもなくなってしまいますよ」
「覚えがあるんだね」